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水戸地方裁判所 昭和61年(行ウ)5号 判決 1988年1月28日

原告 柴山廣司 外四名

被告 茨城県知事

訴訟代理人 二井矢敏朗 櫻井卓哉 日出山武 長山道雄 外七名

主文

原告らの各訴えを却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求める判決

一  原告ら

1  被告が昭和六一年四月一六日付都計指令第二一号をもつてした石岡都市計画事業・石岡駅東土地区画整理事業に関する事業計画において定めた設計の概要についての認可を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

(本案前)

主文同旨

(本案)

1 原告らの各請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  原告らの請求原因

1  原告らの地位

原告らは、いずれも左記土地区画整理事業(以下「本件事業」という。)の施行地区内に居住もしくは生計を営んでいる者である。

(一) 事業の名称 石岡都市計画事業・石岡駅東土地区画整理事業

(二) 施行者   石岡市

(三) 施行地区  石岡市大字石岡字山王、字大橋道西、字木比提、字白久台、字白久、字箕輪下の各一部

(四) 施行期間  昭和六一年四月二一日から同六五年三月三一日

2  行政処分の存在

本件事業は、土地区画整理法三条三項の規定により、都市計画に定められた施行区域の土地についてなされる土地区画整理事業であるところ、本件事業の施行主体である石岡市が同法五二条一項に基づき事業計画(以下「本件事業計画」という。)において定めた設計の概要についてした認可申請に対し、被告は、昭和六一年四月一六日付都計指令第二一号をもつてこれを認可する旨の処分(以下「本件認可」という。)をした。

3  本件認可の違法性

(一) 手続上の違法性

本件事業には次のような手続上の違法があるから、これを前提としてなされた本件認可もまた違法である。

(1) 本件事業は、前記のとおり都市計画事業として施行される土地区画整理事業であるが、都市計画法の基本理念は、住民の意思を計画に反映させ、都市の健全な発展と秩序ある整備を行うことを目的とするものであり、この住民の意思を反映させるための手続のうち最も重要なものの一つが同法一六条一項に定める公聴会の開催である。従つて、同条項は公聴会の開催を都道府県知事又は市町村の自由裁量に委ねたものと解すべきではなく、都市計画のうち軽徴な部分と基本的な部分とを区別し、基本的な部分については公聴会の開催を不要とする特段の事由がない以上、原則としてこれを開催すべきことが予定されているものと解すべきである。しかるところ、本件において石岡市は、公聴会の開催等住民の意見を聴く手続を取らなかつたものであるから違法である。

(2) 本件事業の施行地区内の地権者は一〇九名であるところ、その四〇パーセントにも達する四一名が本件事業に反対し、積極的に反対運動を行つてきた。このため石岡市長は、本件事業について、地権者の同意が得られなければ事業認可申請は行わない旨公言し、事業に反対する住民の意思を十分取り入れるとの発言をしていたにもかかわらず、石岡市は、これら多数の反対者を無視し、強行的に手続を進めてきた。しかし、都市計画法には地権者の同意の規定やその割合についての定めはないものの、都市計画事業が都市整備の反面として関係地権者に重大な影響を与えるものである以上、これら多数の反対意見を無視して手続を強行することは違法というべきである。

(二) 実質的違法性

本件事業計画は、次のとおり都市計画法及び土地区画整理法の趣旨及び理念に反する違法なものであるから、このような事業計画において定められた設計の概要についてなされた本件認可もまた違法である。

(1) 本件事業は、石岡駅東側の土地区画整理を目的とし、その設計の概要の骨子は、地区幹線沿い及び駅前広場沿いを商業地とし、その他の地域を住宅地とするものである。しかし、本件事業の施行地区は既に住宅地として発展をしている地域であつて、これを取り壊して新たに商業を中心として区画整理をすることは石岡市にとつて必要性がないばかりか、地区内住民に著しい不利益を強いることになる。また、石岡市全体の商業力低下を問題にするならば、まず既存の商業地域の再開発を行うことこそ急務であつて、これを行わずに放置し、本件事業を強行することは、事業の優先関係から考えても極めて矛盾があり、違法である。

(2) 本件事業の施行地区の選定について、一部地主の土地を除外する等、不公正な扱いがあつた。

(3) 本件事業の施行地区は面積約一一万三二六五平方メートルで既に一七五人の住民が住んでおり、人口密度は一ヘクタールあたり一五人となつているが、このような土地に減歩を伴う区画整理を行うことは、所有面積の少ない地主の事業後の土地利用を不可能にし、退去を迫ることになるなど、一部住民に著しい不利益を与える結果となるものである。

4  よつて、原告らは本件認可の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

本件認可は、本件事業の施行主体である石岡市が土地区画整理法五二条一項の規定に基づき、本件事業計画において定めた設計の概要についてした認可の申請に対してなされたものであるが、土地区画整理事業における事業計画は、施行地区、設計の概要、事業施行期間等当該事業の基礎的事項について事業の内容を一般的抽象的に定めるものであつて、特定個人に向けられた具体的な処分とは著しく趣を異にし、事業計画それ自体としてはその遂行によつて特定個人の権利義務にどのような変動を及ぼすかが具体的に確定されているわけではなく、いわば当該土地区画整理事業の青写真たる性質を有するに過ぎないというべきである。もつとも、事業計画の公告があると、土地区画整理法七六条、八五条の規定により建築制限等一定の不利益な取り扱いを受けることとされているけれども、これは法律が公告に伴う付随的効果として付与したものであつて、事業計画の決定ないし公告そのものの効果として発生する権利制限ではない。従つて、事業計画は、それが公告された段階においても抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないものというべきである(最高裁判所昭和四一年二月二三日大法廷判決参照)。しかるところ、本件認可は、石岡市に対する監督的地位にある被告が事業計画の一部である設計の概要について認可したに過ぎないものであるから、事業計画の決定ないし公告以上に抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないものというべきである。

なお、土地区画整理法五二条二項によれば、市町村が右事業計画を定めた場合においては、都道府県知事の設計の概要についての認可をもつて都市計画法五九条一項に規定する認可とみなすこととされているが、土地区画整理法三条の五第二項により都市計画法六〇条から七四条までの規定は都市計画事業として施行する土地区画整理事業については適用しないとされているので、本件認可に伴う都市計画法上の権利制限は存在しないものである。

三  本案前の主張に対する原告らの認否及び反論

被告の本案前の主張のうち、本件認可が設計の概要についてなされたものであること、事業計画の公告があると建築制限等一定の不利益な取り扱いを受けることとされていることは認め、その余は争う。

本件計画策定行為は個人の開発、建築等に制約を及ぼし、個人の権利、利益に具体的な影響を与えるものであるから、その一環としてなされた本件認可は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるものと解すべきである。とりわけ、本件のような一連の手続により構成される土地区画整理事業について、その最終段階のみをとらえて抗告訴訟の対象とするしかないと考えると、手続が進行して既成事実が形成されてしまい、権利保護に欠ける恐れが生じるから、本件認可のごとき先行的行為についても抗告訴訟の対象とすることができると解すべきである。

四  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1、2項の事実は認める。

2  同3項の事実について

(一) (一)冒頭の主張は争う。

(二) (一)(1)の事実のうち、石岡市が都市計画を定めるにあたり公聴会を開催しなかつたことは認め、その余の主張は争う。

(三) (一)(2)の事実のうち、石岡市長が原告ら主張のごとき発言をしたことは否認し、その余の主張は争う。

(四) (二)冒頭の主張は争う。

(五) (二)(1)の事実のうち、本件事業が石岡駅東側の土地区画整理を目的とすること及び本件事業の施行地区に住宅があることを認め、その余の主張は争う。石岡市全体の商業力低下の問題は一概に論ずることはできないが、昭和五八年に作成された石岡市商業近代化実施計画報告書によれば、石岡市内の中町、駅前通り、金丸通り及び香丸町で形成された商業地域、すなわち石岡市でも古くから中心商業地域として栄えてきたところは、商店街の地盤沈下の問題が指摘されており、石岡市等関係者によつて同地域の商業力振興と活性化を促進するため、歩道の確保、駐車場の設置、街路灯、カラー舗装、ミニキヤブ敷設等の施策が展開されている。さらに、石岡市総合計画に基づき、既成市街地においては、国府公園、市営駐車場の設置、都市計画道路整備事業、下水道事業の実施により、都市空間の確保と都市基盤の整備が行われている。一方、新市街地においては、スプロール化を防止し、良好な住環境の確保をめざし、彦市山、八軒向土地区画整理組合、住宅都市整備公団による土地区画整理事業が実施されている。このような各種事業は、石岡市の総合的かつ計画的市街地整備の一環として実施されており、本件事業も、右総合計画において市街地開発事業としてそのひとつに位置づけられているのであり、事業の優先関係において何ら矛盾するものではない。

(六) (二)(2)の事実は否認する。

(七) (二)(3)の事実のうち、本件事業の施行地区の面積、住民数、人口密度が原告ら主張のとおりであること及び本件事業が土地の減歩を伴うものであることを認め、その余の主張は争う。本件事業は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図る市街地開発事業の一環として、区画整理の手法により公共施設の整備と宅地の開発を併せて行い、市街地の面的整備を図ろうとするものであり、右事業が施行されると、その施行地区全体の環境の整備改善が図られ、宅地の位置、形状等が整えられるなど、減歩に見合う宅地の利用増進が図られることとなるのである。そして、石岡市は、本件事業計画の決定公告後、土地区画整理法五六条の規定に基づき、換地計画、仮換地の指定及び減価補償金の交付に関する事項について審議する土地区画整理審議会を置き、同法第三章の各条の定めるところに従い、換地計画、仮換地の指定及び換地処分等を行つていくものであり、将来にわたり住民に不利益を与えないような方法により、本件事業を推進しようとしているものである。

五  被告の本案主張

1  本件事業の手続上の適法性

(一) 本件事業の手続の概要

本件事業は、石岡市が都市計画法一二条二項の規定により定めた施行区域の土地について、土地区画整理法三条三項、同条の五第一項の規定により都市計画事業として施行する土地区画整理事業であるが、その一連の手続は、次のとおり都市計画法及び土地区画整理法に則りすべて適法になされたものである。

(1) 石岡市は、本件事業について、後記(三)のとおり住民及び利害関係人に対し数回にわたり説明会を行つたうえ都市計画案を作成し、石岡市長は石岡市総合計画審議会条例二条の規定に基づき、昭和五九年一〇月二七日石岡市総合計画審議会に同案を諮問したところ、同審議会は諮問のとおり答申した。

(2) 石岡市は、同年一一月一二日都市計画法一七条一項の規定による公告をなし、右都市計画案を公衆の縦覧に供したところ、住民及び利害関係人から意見書の提出はなかつた。

(3) 石岡市は、同年一一月二八日被告に対し、同法一九条一項の承認を受けたい旨の申請をしたところ、被告は、茨城県都市計画地方審議会の議を経て同年一二月二八日同計画を承認した。

(4) 石岡市は、昭和六〇年一月一一日都市計画法二〇条による告示をし、同市長は公衆の縦覧に供する手続をした。

(5) 石岡市は、本件事業に関する施行規程を石岡都市計画事業石岡駅東土地区画整理事業に関する条例(昭和六〇年六月二八日条例第一四号)によつて定めた。

(6) 石岡市は、本件事業に関する事業計画を作成し、石岡市長は、昭和六〇年一一月五日土地区画整理法五五条一項の規定により本件事業計画を公衆の縦覧に供した。

(7) 被告は、本件事業計画について、利害関係者の一部の者から意見書が提出されたため、右意見書を同年一二月二五日茨城県都市計画地方審議会に対議し、昭和六一年三月二八日右意見書に係る意見を採択すべきでないとの議決を得たうえで、同年四月七日右意見書の提出者にその旨通知した。

(8) 石岡市は、昭和六一年四月一四日被告に対し、同法五二条一項の規定により本件事業の設計の概要の認可申請をした。

(9) 被告(職務代理者)は、昭和六一年四月一六日都計指令第二一号をもつて右申請に対し、これを認可した。

(10) 石岡市長は、同年四月二一日同法五五条九項の規定により石岡市公告第五〇号をもつて本件事業計画の公告をした。

(二) 公聴会の不開催について

都市計画法一六条一項は、都道府県知事又は市町村は、都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする旨定めているが、右の文言自体によつてすでに明らかなとおり、公聴会の開催は、住民の意見を反映させる措置の例示として挙げられているに過ぎず、かつ住民の意見を反映させる措置は「必要があると認めるとき」にとれば足りるものと規定されているのであるから、その開催が常に義務づけられているものではなく、その開催の要否は、都市計画を決定する権限を有する都道府県知事又は市町村の裁量に委ねられているものと解すべきである。従つて、公聴会の開催をしなかつたとしても手続上の違法の問題を生じるものではない。しかも石岡市は、公聴会を開催しなかつたとはいえ、住民の意見を反映させるべく、後記(三)のとおり数多くの説明会を開いて住民の意見を聴く機会を設営し、都市計画法一六条一項の趣旨に適合する措置を講じているものである。

(三) 住民意見の聴取について

石岡市は、別表(地元説明会開催状況)番号1ないし6のとおり会合を開いたほか、市長ほか市の担当職員が昭和五九年九月以降、施行区域内の権利者方各戸を訪問するなどして住民の意見を反映する機会を設けたうえ、本件都市計画案を作成し、都市計画法一七条一項の規定に基づき、同年一一月一二日同案の公告をした後、同月一三日から二六日までの間、同案を縦覧に供した。また石岡市は、都市計画決定後においても、本件事業計画決定に至るまでの間、同表番号7ないし12のとおり説明会を開催し、住民の意見を聴取する機会を設け、さらには右事業計画決定後においても、同表番号13及び14のとおり説明会を開催するなどして本件事業に関する地域住民の理解を得ることに努め、そのうえで本件認可申請に及んだものである。

2  本件事業の内容上の適法性

(一) 本件事業の必要性

首都東京から八〇キロメートルに位置する石岡市は、昭和二三年に都市計画区域に、昭和四一年には首都圏整備法に基づく都市開発区域に指定され、昭和四六年に市街化区域及び市街化調整区域が定められ、昭和五二年にはその見直しが行われるなど、広域的にかつ計画的に市街化が図られているところであり、近年に至つては、常磐自動車道の開通など交通体系の整備が進み、宅地開発や工業開発が進行している。

市域からみて、石岡駅西側の既成市街地と国道六号線以東に展開する新市街地の中間に位置する石岡駅東側の地域は、戦前から現在の石岡第一高等学校やアルコール工場が立地するほか、自然発生的な集落が点在していたところであるが、昭和四六年の消防署及び警察署の移転を契機として、昭和四九年に市庁舎の移転、昭和五一年に法務局出張所の移転と、公共・公益施設の立地が相次ぎ、昭和五五年には石岡駅の東西を結ぶ自由連絡橋が開設するなど、住宅地としての利便性が向上し、近年、市街化の様相が著しい。

石岡駅東側の地域のうち、石岡駅に近接する本件事業の施行地区内は、従来から農地と宅地が混在し、狭あいな道路に沿つて帯状に宅地がはりつき、十分な公共施設もなく、防災上困難性が存するところであり、土地利用状況は健全なものとはいえず、このまま宅地化が進行すると、公共施設の整備をますます困難なものとし、生活環境の劣悪化を招くことになるので、早期に、道路等公共施設の整備改善を行い、宅地の利用の増進を図り、健全な市街地を造成することが必要になつている。

石岡市は、昭和五一年に策定した石岡市総合計画において、本件事業の施行地区を含む石岡駅東側の地域につき、土地区画整理事業の検討を進めるものと定め、さらに、昭和五六年に策定した同計画の基準構想に基づく昭和六一年策定の基本計画において、市施行により本件事業を施行するものと定めており、右事業は、石岡市の行政施策上、重要な位置づけがなされている。

以上のとおり、本件事業は、石岡駅と接した石岡市の中心部に位置しながら石岡駅裏地区として未整備の状態にある本件施行地区を、地区幹線及び駅前広場沿いは商業地として、その他は一般住宅地として利用するとの基本方針に基づき、公共施設の整備改善及び宅地の利用増進を図るため、石岡市において、市街地開発事業としての土地区画整理事業を施行するものであり、その内容は後記(二)のとおりである。そして本件施行地区において、土地利用計画上、地区幹線沿い及び駅前広場沿いを商業地として、その他を一般住宅地として利用増進を図ることは、都市の健全な発展と秩序ある整備に資するものであり、本件事業の必要性は十分あり、道路、公園等公共施設の整備を行い、整然とした街区を形成することにより、環境の整備改善が図られることになるから、本件事業が施行地区内の住宅に不利益を強いることは全くない。

(二) 本件事業の内容

(1) 施行地区

本件事業の施行地区は、常磐線線路に鹿島鉄道線路をはさんで接しており、石岡駅の東側に位置し、西は山王川都市下水路、東は市道三八号線、南は国道六号線、北は民有地に接する、面積約一一・三ヘクタールの地域であり、その現況は、石岡駅裏地区として未整備の状態にあり、近年、市役所をはじめとする公共・公益施設が本地区周辺に立地したため、急速に市街化が進んだ地区である。

地形は、西低東高であり、常磐線線路敷が約一五メートルの標高であり、東側の市道は約二五メートルの標高となつているゆるやかな傾斜地である。

土地利用は、畑地に宅地がリボン状にはりつき、いわゆるスプロール化の状況にある。

人口は、一七五人であり、人口密度は、一ヘクタールあたり一五人である。

道路は、四メートル以下の市道が六路線地区を覆つており、すべて舗装がなされている。その他県道が一路線ある。

水路は、地区西側に接し山王川都市下水路が整備済である。

供給処理施設としては、上水道があるが、ガスはない。

下水道は、未整備の状況にある。

主な立地施設としては、アルコール工場の引込線が地区内を横切つている。

石岡第一高等学校が地区に隣接してある。

地価の現況は、平均一平方メートルあたり約五万五〇〇〇〇円程度である。

(2) 設計の方針

(基本方針)

地区幹線沿い及び駅前広場沿いは、商業地として利用し、その他は、一般住宅地として利用する。

地区人口は、約九〇〇人、人口密度一ヘクタールあたり八〇人として計画する。

(街路計画)

地区中央に都市計画道路(幅員二五メートル)を配し、起点に駅前交通広場を設ける。

区画道路は、国道六号線から駅前を経て旧国道に至る道路を九ないし一二メートルの幅員規模で整備し、その他は、宅地サービス用の六ないし四メートル幅員の道路を適宜配置する。

(排水計画)

既に幹線水路である山王川都市下水路が整備済であるので、地区の雨水排水は、これに接続させる。

(公園計画)

地区総面積の三パーセントを確保し、なお計画人口一人あたり三平方メートル以上を確保し、児童公園規模を二箇所適宜配置する。

(3) 資金計画

事業費は、一七億六五〇〇万円とし、国庫補助金、市補助金、保留地処分金、市単独費をあてる。

3  本件認可の手続上及び内容上の適法性

本件事業について、事業計画において定める設計の概要の認可が適法であるためには、手続として、認可申請書が土地区画整理法五二条一項に規定する同法施行規則三条の二の規定に従つた適式なものであること、内容として、都市計画に適合するなど法令に違反していないことが必要である。

被告がした本件認可については、石岡市から同法施行規則三条の二の規定に従つた認可申請書が提出されており、手続上何ら問題とすべき点はない。

また、本件認可に係る設計の概要の内容については、前記2のとおり法の定めた目的にまさに適合するものであり、都市計画に定められた施行区域、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項等に適合し、土地区画整理法六条五項に規定する同法施行規則九条の設計の概要の設定に関する基準を満たしているなど、法令に違反するものはない。

以上のとおり、本件認可の申請は、手続、内容のいずれにおいても適法なものであり、被告のした本件認可には何らの違法もない。

六  被告の本案主張に対する原告らの認否

1  被告の本案主張1項について

(一) (一)冒頭の主張のうち、本件事業が都市計画事業として施行する土地区画整理事業であることは認め、その余は争う。

(二)(1) (一)(1)の事実のうち、石岡市が被告主張のごとき説明会を行つたことは否認し、その余は認める。

(2) (一)(2)ないし(6)の各事実は認める。

(3) (一)(7)の事実のうち、意見書を提出したのが一部の者であつたことは否認し、その余は認める。

(4) (一)(8)ないし(10)の各事実は認める。

(三) (二)のうち、石岡市が住民の意見を反映させる機会を設けたことは否認し、その余の主張は争う。

(四) (三)の事実は否認する。

2  被告の本案主張2項について

(一) (一)第三段の事実は否認する。

(二) (二)の事実は認める。

3  被告の本案主張3項の事実は争う。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1、2項の各事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、本件認可が原告らに対する関係で抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか否かを検討する。

本件認可の対象は、石岡市が策定した土地区画整理事業の事業計画のうち、設計の概要に係るものであるが、かかる事業計画における設計の概要は、事業施行前後の宅地の地積の割合、保留地の予定地積、事業により新設される公共施設の位置及び形状等当該土地区画整理事業の設計上の基礎的事項を、設計説明書及び設計図により(土地区画整理法施行規則六条)一般的、抽象的に定めるいわば青写真たる性質を有するものに過ぎない。しかも、このような設計の概要が都道府県知事によつて認可されたとしても、これが当該事業計画の施行地区内の宅地建物の所有者又は賃借人等の利害関係者の権利又は法律上の利益に何らかの変動を及ぼす旨を定めた法律上の規定は存在しないから、かかる認可は直接国民の権利又は法律上の利益に対し具体的な変動を与える行政処分にはあたらないと解するのが相当である。

もつとも、市町村が都道府県知事の設計の概要に対する認可を受けて事業計画を決定し、その公告をすると、土地区画整理法七六条、八五条の規定により、施行地区内において土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更もしくは建築物その他の工作物の新築、改築及び増築等につき都道府県知事の許可を受けなければならないとされ、また、施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなつた者は所定の権利申告をしなければ権利が存しないこととみなされるなど、一定の不利益な取り扱いを受けることとされているが、このような制約は、当該事業の円滑な遂行に対する障害を除去するための必要に基づき法律が公告に伴う附随的な効果として特に付与したにとどまるものであつて、事業計画の決定ないし公告そのものの効果として発生する権利制限ではないものというべきである。従つて、事業計画はそれが公告された段階においても特定個人に向けられた行政処分とはいえないものというべきである。

三  よつて、原告らの本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邉惺 近藤壽邦 池田陽子)

別表<省略>

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